Crew OKAMOTO’S OKAMOTO KOKI
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OKAMOTO KOKI
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渋谷系とは…「シニカルな洒落っ気」
連載|Shibuya Culture Studies #1
オカモトコウキ(OKAMOTO’S)
インタビュー
Interview & Text By Shoichi Miyake
Photography By Maruo Kono
オカモトコウキいわく、
渋谷系の定義とは…シニカルな洒落っ気
時代の変遷とともに多様なカルチャーを生み出してきた渋谷の街と人。その多様さゆえに「渋谷カルチャー」と言っても実はあいまいで、捉えどころがない。
いまあらためて「渋谷カルチャー」とは何なのか、さまざまな視点から振り返っていく本連載。
今回は「渋谷系音楽」とはいったい何だったのか、現在進行形で活躍するアーティストたちにその定義について個人的な見解を訊くシリーズ第一回。
Profile
オカモトコウキ(OKAMOTO’S)
1990年生まれ、東京都出身。
中学在学時、同級生とともに現在のOKAMOTO’Sの原型となるバンドを結成。
2010年、OKAMOTO’SのギタリストとしてCDデビュー。ソングライティング力を生かしバンドの中心的なコンポーザーとしても活躍、バンド内のいくつかの曲でメインボーカルを務めている。
2019年10月には、初のソロアルバム「GIRL」をリリース。
OKAMOTO’Sは実は渋谷系っぽい
──ひとくちに渋谷系と言ってもその捉え方は世代によっても様々だと思います。コウキさんにとっての渋谷系との出会いは?
OKAMOTO’Sを始める前から昔の洋楽を聴いていたんですけど、その一方で日本のニューミュージックであったり山下達郎さんの楽曲も愛聴していて。そこから日本の音楽をどんどん広げていって、フリッパーズ・ギターなど90年代の日本の音楽も聴くようになったんです。後々、そういった音楽が渋谷系と呼ばれていることを知りました。
ところで、意外に思う人も多いかもしれないですが、じつはOKAMOTO’Sって最初からけっこう渋谷系っぽいバンドだと思うんですよ(笑)。
──それは興味深い言説です(笑)。
OKAMOTO’Sってデビュー直後はストレートなロックバンドというイメージが強かったと思うんですね。でも、最初からみんなレコードが好きで、レコード屋でいろんなジャンルのレコードを掘っていたし、ちょっとシニカルな視点で洒落的にいろんな洋楽のエッセンスを組み合わせて自分たちの曲のアレンジに活かしてきた。当時は自覚してなかったけど、そういう姿勢がすごく渋谷系っぽいなと思うんです。
──それはレコード由来のサンプリング感覚というか。
そう、まさにサンプリング感覚ですね。デビュー当時は60年代のロックなどがしっくりきたからオーセンティックなロックバンドとしてスタートしたし、実際にメディアでは「10代とは思えないロックンロールを鳴らす恐るべき子どもたち」みたいな言い方もされました。
でも、僕自身は当時からどちらかと言うと渋谷系の姿勢やスタイルにシンパシーを覚えていて。シニカルで洒落が効いてる感じ。だから、OKAMOTO’Sは渋谷系だと思うんです(笑)。
“渋谷系”を規定したのは音楽ジャンルではなくスタンス
──渋谷系って音楽的なジャンルはあまりに多様だし、そういうマインドのほうが大きな意味を持つかもしれないですね。
そう思います。僕らは10代のころからシニカルな視点を持っていたがゆえに当初は頭でっかちになっていたところもあったと思います。僕らは音楽に対する愛が強すぎるがゆえにバカになりきれないところがあって。ステージでこうしたらもっと盛り上がるみたいな方程式があるとしたら、そこを拒んでしまうみたいな(笑)。自分たちの渋谷系気質がそれをよしとしないんですよね。でも、だからこそ10年以上、飽きずにフレッシュなままバンドを続けられてこれたんだと思うんです。
──お世辞ではなく、今のOKAMOTO’Sが過去最高にカッコいいと思います。
めっちゃうれしいです。それってバンドとして一番いい形だと思うんです。10年以上やってもまだまだ自分たちのやりたいことがあるから。
今もなお渋谷系から継承しているもの
──あとは2019年にリリースされたコウキさんのソロアルバム『GIRL』も洗練されたコード感であったり、メロウな旋律などに渋谷系から継承したエッセンスを感じる楽曲が少なくないですよね。
そうですね。ソロアルバムを作るときにどんなサウンドが自分の声に合うのか考えたんです。いわゆるギターロックなテイストを押し出すと自分の声にフィットしないと思ったんですね。そういう曲はOKAMOTO’Sで(オカモト)ショウさんが歌ったほうがハマるので。なので、ソロの楽曲はメロウなほうがいいなと思ったんです。
そういうときに参考になるのが渋谷系の楽曲だったりして。自然とそういう作りになっていきましたね。
──最近、コウキさんは藤原ヒロシさんと新ユニット、ORDER of THINGSを結成しましたよね。ユニットのあり方も楽曲も非常に軽やかなのが印象的です。90年代、ヒロシさんは音楽とファッションで渋谷と裏原宿を繋ぐような存在でもあったと思います。
ヒロシさんが偉大な方だとはもちろん認識してるんですけど、僕は当時の東京のカルチャーをリアルタイムで体感してなかったから、肩肘張ることなくヒロシさんと音楽制作を共有できるんだと思います。
ヒロシさんと曲を作るときはシンプルにすごく楽しいです。僕の制作部屋までフラッとギター1本だけ持って遊びに来てくれるんです。イチから部屋で一緒に曲作りして、歌詞もその場で書いて。短期間で偶発的に曲が生まれていきました。今も曲を作り続けていて、グルーヴが上がってきてますね。
僕はOKAMOTO’Sでキャリアを重ねている中で無意識の内に曲の捉え方がJ-POPナイズされていたところがあって。たとえばヒロシさんに「コードをこっちにいく前にこれを挟みませんか?」って提案すると、「う〜ん、このままでいいよ」って言ってくれるんです。シンプルに音楽を作る楽しさをあらためて思い出す感覚がある。でも、ドラムのビートはめっちゃこだわったり、着目しているところが自分とは違うから面白いです。
渋谷系とは、何だったのか
──最初に核心を語ってくれましたが、あらためてコウキさんにとって渋谷系とはどういう音楽文化だと思いますか?
やっぱり洒落っ気に尽きるかな。あと、余裕な感じ。
僕自身の性格もOKAMOTO’Sというバンドの性格もバンドカルチャー然とした競争心のある世界って一番遠いところにある気がしていて。個人的には渋谷系にカテゴライズされるアーティストたちのように洒落っ気を出しながら自分の知識と表現で戦ってクールに見えるという姿勢に憧れる。音楽的にはみんなやっていることは違うんだけど、それぞれが誰にも似ていないクールなカッコよさがある。そういうアーティストたちが同時代を生きていたのはすごくいい時代だったんだなと思います。
<INFO>
OKAMOTO’S 約2年8ヶ月ぶりのオリジナルアルバム
「KNO WHERE」
2021.9.29 on sale
https://www.okamotos.net/special/kno_where/
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