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寺田燿児 SFファンタジー漫画が発売

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寺田燿児 (SFファンタジー漫画が発売)

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-後編- 寺田燿児によるSFファンタジー漫画『TORA TORA TORA TORA』が発売





寺田燿児によるSFファンタジー漫画『TORA TORA TORA TORA』が発売

「戦争に対する危機感がずっとある。それに抗うために漫画を描いています」


後編 

Interview By Hajime Oishi
Photography By Sachie Abiko
Edit By Yukiko Takeda


「反戦もの」としてカテゴライズされたくない。だから物語を表現する

──では、今回刊行された最新作『TORA TORA TORA TORA』について話を聞かせてください。人工知能を移植された動物たちが戦争へと駆り出される近未来が舞台となっていて、飼い猫が徴兵されてしまう少年が主人公となっています。物語の構想はどうやって浮かんできたのでしょうか。

『DARK CONTINENT』に自作自演のインタヴューを載せてるんですけど、そこに構想を書いてるらしいんですよ。(ページをめくりながら)……そうそう、これです。『飼い猫が徴兵されていく話』という。

──そこが原点だった?

そうですね。戦争に対する危機感みたいなものが自分のなかにずっとあるんですよ。もしも太平洋戦争のときのように徴兵制が敷かれたとしたら、自分は拒むことができるかと。世間がそういう空気になったとき、おかしいと言えるのか。社会の動向とか情勢から影響を受けて、そこからインスピレーションが広がっていった感じですね。

戦争が始まったら全部おしまいになりますからね。あらゆる文化活動ができなくなるわけだし、それに抗うために自分はやるんだと。そういう意識があるんです。

──抗う方法は漫画でもあるし、音楽でもあると。

何でもいいと思うんですよ。『DARK CONTINENT』のころからそういう意識はあったと思います。

 ※『TORA TORA TORA TORA』より抜粋

──『TORA TORA TORA TORA』というタイトルも真珠湾攻撃の開始を伝える電信の暗号「トラトラトラ」から取られています。

ストーリーのなかで何かしらの呪文を唱えるというアイデアが出てきて、その呪文について考えるなかで『トラトラトラ』という真珠湾攻撃のときの暗号が浮かんできたんですよ。それをトラネコとかけようと。

──そこで「飼い猫が徴兵される」という当初のアイデアと繋がってくるわけですね。

そうですね。徴兵された動物がどうなるんだろうと考えたら、戦場に行かされるわけですよね。でも、普通の動物の状態では戦えないから、擬人化というか、ヒューマノイドされて筋力増強させられ、人工知能が取り付けられて、兵士として送り出される。ところがかつて飼い猫だった兵士が逃げ出して、動物の解放活動に関わるというのが全体のアイデアです。

──作品中では「トラトラトラトラ」という呪文が唱えられるわけですが、燿児さんはこの言葉にどういう意味を持たせようとしたのでしょうか。

戦争を終わらせる呪文ということですよね。戦争を止めたいんです、僕は。

──この呪文は燿児さんにとっての表現そのものであるようにも思えたんですよ。つまり、燿児さんは呪文を唱えるように絵を描き、音楽を奏で、そのことによって戦争を止めたいんじゃないかと。

そうですね。メッセージを発信してもいいんですけど、あんまり上手じゃないんです。物語として表現したほうが自分のやり方だなって思っています。

「反戦もの」としてカテゴライズされたくないっていう気持ちもちょっとあるんですよ。あくまでファンタジー・SFなんだけど、物語の根底には戦争に対する危機感がある。もちろん、はっきり「反戦」を訴えたほうが伝わるのかもしれないし、「こんな回りくどいことやってても変わらねえよ」と言う人はいるでしょうし、自分でもそう思ってるところはあります。

戦場をあえて描かない。わかりやすい勧善懲悪ではない世界

──確かに単純な作品じゃないと思いますけど、確実に深い余韻を残す作品ではありますよね。だからこそ、読み終わった後に誰かにすぐ感想を話したくなる。それぞれのシーンの解釈を語り合いたくなるんですよ。「やっぱり戦争はよくないね」というだけじゃなく。

最初は猫たちが戦場で戦っているシーンも描いてあったんですよ。結局そこはカットしました。あえて省いたんです。だから、作品中に戦場の雰囲気がないと思うんですよね。

──確かに。

でも、どこかで血が流れているんですよね。それと、わかりやすい勧善懲悪の世界にしたくなくて、主人公が政府の機関で働いている設定にしました。政府の人間でありながら徴兵を拒否していて、父親は「この戦争は間違っている」と思いながら外交官をやっている。実際、戦争のなかではいろんな人間模様があると思うんですよ。たとえば、ユダヤ人に優しいナチス党員もいたはずだし。

──燿児さんとも縁の深いシンガーソングライターの折坂悠太さんも戦争に対する危機感を作品に反映していますよね。戦時中を生きているという自覚のもと、ヒリヒリとした作品作りを続けている。今回の『TORA TORA TORA TORA』にせよ、『DARK CONTINENT』にせよ、燿児さんの作品にもそうしたヒリヒリ感があるように感じます。

オリー(折坂)とは結構前から戦争についての話をしてるんですよ。自分の母は福祉業界でずっと仕事をしていたんですけど、オリーもフリースクールで世間に馴染めない子と触れ合っていますしね。そういうところにいると、政治について考える機会も多いと思うんですよ。

──ちなみに、この猫は実在の猫がモデルになってるんですか。

上京してすぐのころ、東小金井に住んでいたんですけど、ある日、猫が現れて、一緒に暮らすようになったんです。半年ぐらい経ったころ、突然姿を消したんですね。今でもその猫のことを思い出すんですよ。その猫はサバトラだったんですけど。

──猫の動きがすごくリアルですよね。しかも愛情に溢れている。

今も猫を一匹飼っていて、その動きをスケッチしたりしました。あと、映画からの引用も多いんです。『ジョーカー』『エネミー・オブ・アメリカ』『イングロリアス・バスターズ』『ローマの休日』『天空の城ラピュタ』。奥付には参考にした映画のタイトルもリストアップしているんですけど、『DARK CONTINENT』でも映画からだいぶ引用していて。

──その元ネタを探る楽しさもありますね。

そうかもしれないですね。漫画を描くというより、絵コンテを描いているような感覚もあるんですよ。

蔦に覆われた建物が気に入り「絶体にここでやりたい」と思った

──8月の半ばには東京で、10月には大阪で『TORA TORA TORA TORA』の原画展が開催されます。東京は代官山のシェアオフィス/ギャラリー「みどり荘」で開催されますが、燿児さん自身が場所を選んだそうですね。

2年前に散歩していて見つけました。蔦に覆われた鬱蒼とした建物が現れて、なんだここは?と思って。今年になってから原画展をやるためのギャラリーを探していたとき、蔦に覆われた建物がみどり荘であるとわかって。ここで絶対にやりたいと思いました。

僕、音楽イヴェントもジャングルみたいなところでずっとやりたかったんですよ。ライブハウス然とした、お膳立てされた場所でやるのがなんか違うなと前々から思っていて。

──無菌室みたいなギャラリーでやるのはどうも居心地が悪かった?

そうそう。むしろ廃墟とかでやりたいんですよ。今にもなくなりそうな場所というか。

──原画展はどんな感じになりそうですか。

原画そのものが25点。A0に伸ばしたもの、色づけしたものがいくつかあって、あとは作中に出てくるブロンズ像を粘土で作っています。あとは下書きが膨大にあるので、それもある一角に敷き詰めようかと。NG集みたいなものですね。

──みどり荘は渋谷からも近いですが、渋谷の街についてはどんな印象を持っていますか?

渋谷っていろんな人が集まる街ですよね。すごく背が高い人もいれば、すごく太った人もいて、いろんな人が世界にはいるんだということを教えてくれる。だから、渋谷に無意味に寄ることもあるんですよ。そのたびに自分が知っている世界がいかに小さいか教えられます。

──渋谷にくると必ず寄ってしまうという場所は?

(老舗の大衆酒場)山家本店とかですね(笑)。あとはオリーの事務所が入ってるインフォスタワーの前の広場でワン缶するのも好きです。

寺田燿児 
広島県生まれ。yoji&his ghost bandの名でCD『My Labyrinth』(’14)『ANGRY KID 2116』(’16)を発表。角銅真実のサポート、折坂悠太(合奏)メンバーとしてFUJIROCK FES’18などに出演。’19 に中編漫画『DARK CONTINENT』を東南西北kikenよりリリース。街の中華を巡る「中華満腹見聞録」、オ ンラインストア「空論雑貨店」を運営。’22に2作目となる長編漫画『TORA TORA TORA TORA』を発表す る。鼻のほくろがかわいい愛猫・朔太郎と古いビル暮らし、趣味は街の中華屋巡りと人間観察、特技は餅つき
https://www.instagram.com/ysfor_men/


【漫画情報】

『TORA TORA TORA TORA』

ページ数/140P  定価/ ¥2000(税別) 発売元/東南西北kiken 日本語(英訳付き)

〈あらすじ 〉舞台は少子化が進んだ近未来。最新科学は人工知能を動物に移植する手術に成功した。主人公の少年ヤンは 科学者である祖母マリから鍵しっぽの猫TORAを譲り受けるも、長期化する戦争と動物徴兵のため悲しい別れを余儀な くされる。時を経て青年となり、国防総省で兵器デザインの仕事に就きながら未だTORAの行方を心配するヤンは、同 僚の報せによりTORAが脱走していたことを知る。技術者としての軍事への加担と、無謀で破滅的な計画に対する疑念 を抱きながら、動物解放運動を行う活動家ウー・ジョンと出会い、秘密の呪文の記憶を辿って祖母の家に向かう。

空論雑貨店
https://9dragon.stores.jp

【原画展情報】

東京: 
8/12(金)~8/21(日)13:00~20:00 
MIDORI.so NAKAMEGURO(東京都目黒区青葉台3-3-11)   
https://midori.so/midoriso_nakameguro

大阪:
10/8(土)~10/23(日)13:00~19:00(18:00)  
FOLK old book store (大阪市中央区平野町1-2-1)
https://www.folkbookstore.com





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