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Chiaki Sato
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渋谷系とは…「カルチャーのるつぼ」
連載|Shibuya Culture Studies #2
佐藤千亜妃 インタビュー
Interview & Text By Shoichi Miyake
Photography By Suguru Saito
佐藤千亜妃いわく、
渋谷系とは…カルチャーのるつぼ
時代の変遷とともに多様なカルチャーを生み出してきた渋谷の街と人。その多様さゆえに「渋谷カルチャー」と言っても実はあいまいで、捉えどころがない。
いまあらためて「渋谷カルチャー」とは何なのか、さまざまな視点から振り返っていく本連載。
今回は「渋谷系音楽」とはいったい何だったのか、現在進行形で活躍するアーティストたちにその定義について個人的な見解を訊くシリーズ第二回。
Profile
佐藤千亜妃
4 人組バンド「きのこ帝国」の Vo/Gt/作詞作曲を担当。 (2019年5月27日に活動休止を発表)
現在はソロで活動中。その類まれな表現力を纏った唯一無二の歌声は、 音楽ファンのみならず数々のミュージシャン、タレント、 俳優等からも支持されている。他アーティストへの楽曲提供・プロデュースを手掛けるなど、 その活躍は多岐にわたる。
渋谷系の定義はやっぱりあいまい
──佐藤さんは渋谷系と呼ばれる音楽文化にどんなイメージを持ってますか?
渋谷系が流行っていた時代のカルチャーをリアルタイムで体験していないので、ざっくりとしたイメージしかないんですけど。ただ、デビュー前のきのこ帝国の活動拠点は渋谷がメインだったんです。かつてあった渋谷屋根裏というライブハウスがホームグラウンドだったり。だから、音楽的なジャンルは置いておいて、きのこ帝国も渋谷系といえば渋谷系なのかなと(笑)。
──渋谷系と言われてパッと思い浮かぶアーティストは誰ですか?
やっぱりフリッパーズ・ギターですね。渋谷系の区分が難しいですよね。たとえば岡村靖幸さんも渋谷系に入るのかな?とか。そのあたりは諸説あると思うんですけど。私自身がすごく好きで聴いていたフィッシュマンズやUAさんはどうのなのかな?とか。
──そのあたりの線引きはあいまいですよね。切り口によって違ってくるというか。
そうですよね。ありがたいことに「フィッシュマンズときのこ帝国は似ているところがある」って言われることがけっこうあったんです。フロントマンの佐藤伸治さんと佐藤姓つながりということもあるのかもしれないですけど(笑)。自分たちはサウンド的にフィッシュマンズを意識したことはなかったんですけど、ちょっとダブっぽいアプローチをすると「似てるね」って言われることがありました。意識はしてなかったけど、音楽好きの人たちに愛されている大先輩のバンドだしすごく光栄だなと。
「クロノスタシス」が繋いだ時代とカルチャー
──佐藤さんのソロ曲において、たとえば前作『PLANET』収録の「Summer Gate」や「Lovin’You」、最新作『KOE』収録の「甘い煙」などブラックミュージックの意匠を昇華したアーバンポップなテイストの曲は、渋谷系のイメージに近いものを感じます。
こういうタイプの曲は、きのこ帝国時代から作ってはいるんですけどね。「クロノスタシス」もそうだし。
──たしかに「クロノスタシス」と「Summer Gate」は地続きに感じられるところがありますね。
そうなんですよ。2014年にきのこ帝国で「クロノスタシス」を作ったときはメンバーに「これ、ウチらでやるの?」ってボツになりそうだったんですけど、「絶対にカッコよくなるからやろうよ!」と言って実現したんですね。
「クロノスタシス」を作った2014年から2016年くらいまでは自分が小中高時代によく聴いていたR&Bをはじめとするブラックミュージックからの影響をバンドに還元していこうという意識があったんですね。「クロノスタシス」はリリース当初も反響がありましたけど、今年になって映画『花束みたいな恋をした』の劇中でフィーチャーされて、再びバズるという現象が起きて。10代のリスナーが聴いてくれたり、自分の感覚と時代がやっとハマったなと思いました(笑)。
──バンドサウンドではあるけれど、きのこ帝国も音楽的にオルタナティブロックをベースにしたうえでダブやブラックミュージックといろんなレイヤーがありました。
はい。2016年にリリースした『愛のゆくえ』というアルバムに収録されている「LAST DANCE」や「MOON WALK」、「畦道で」という曲も横ノリを意識していたアプローチをしていて。ソロになってからはバンドサウンドだけではなく打ち込みで作ったトラックでも歌うようになって、よりアーバン感が増した聴こえ方がするのかなと思います。そうやっていろんなグラデーションを経てやっと横ノリのグルーヴが身になってきたのかなって。
さっき言ってもらったように、「クロノスタシス」と「Summer Gate」は自分の中でも近い匂いを持っていて。夜の街を歩くというイメージ然り。
最新ソロアルバムに収録されている「甘い煙」は気だるく歌うことを意識しました。ドラムはタイトでレイドバックしたノリが得意なプレイヤーがいいというイメージがあったので、mabanuaさんにお願いしました。贅沢なレコーディングでしたね。「甘い煙」はいつかCHARAさんに歌ってほしいなと思ってます(笑)。
──こういう話を聞くと渋谷系にダイレクトに影響は受けてないけれど、渋谷系から派生した文脈できのこ帝国や佐藤千亜妃のソロ作を語れるところが実はあるなと思いますね。
絶対にあると思います。渋谷系に影響を受けた人たちに、私たちが影響を受けている部分もかなりあると思いますし。そういう音楽文化のつながりを感じますね。ちなみに「Summer Gate」のMVの撮影は渋谷でやりました。
──監督は山田智和さん。KID FRESINOさんの「Coincidence」など、山田監督は街をMVで切り取るのが得意ですよね。
KID FRESINOさんのMVもすごくカッコいいですよね。「Summer Gate」のMVも自然と「渋谷を歩いたり、走ったりするのがいいんじゃない?」ってなったんです。映像の色合いも絶妙ですよね。そういう意味では渋谷系をアップデートしたような曲になってるかもしれない。
──「クロノスタシス」は下北沢を歩くMVだし、そういう視点でも「Summer Gate」との地続き感と対比を楽しめると思います。
たしかに。どちらのMVもカルチャーを感じられる街を歩いていて。
そうだ、今思い出したんですけど、3年前くらいにアコギが置いてあるバーで菅田将暉くんに偶然会ったことがあって。そのときに菅田くんが「『クロノスタシス』がすごく好きで聴いてます」と言ってくれて。そこで一緒に「クロノスタシス」を歌ったことがあったんです。
──そんなことが(笑)。
だから、『花束みたいな恋をした』を観て「また歌ってくれてる!」と思ってエモい気持ちになりました(笑)。私は菅田くんがシンガーとしてデビューする前から歌声がすごくいいなと思っていたので、いつか楽曲提供できたらうれしいですね。
──それこそ「クロノスタシス」と「Summer Gate」の続編のような曲を男性視点で歌ってもらっても面白いかもしれない。
そしたら有村架純ちゃんにも歌ってもらいたくなっちゃいますね。話がどんどん大きくなってるな(笑)。
渋谷系とは、何だったのか
──最後に、あらためて佐藤千亜妃にとっての渋谷系を言葉にするとしたら?
渋谷ってカルチャーのるつぼというイメージがすごくあるんですね。渋谷という街はいろんなカルチャーを許容してくれるキャパシティが年々大きくなっている気がするし、いろんな人種がいていいという空気感が私はすごく好きなんです。
渋谷という排他的じゃない街で生まれる音楽文化が、私がイメージする渋谷系なのかなと思います。
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<INFORMATION>
佐藤千亜妃
『KOE』
https://sp.universal-music.co.jp/chiaki-sato/koe/
Hair & Make-up:SAKURA(MAKIURA OFFICE)
Stylist:Izumi Machino
ジャケット¥54,450(Name.●03-6416-4860)、中に着たシャツ¥44,000(kudos)、シューズ¥41,800(参考価格)(ROMBAUT/ともにMATT.●info@the-matt.com)、パンツ¥12,100 (Lee/リー・ジャパン カスタマーサービス●0120-026-101)イヤーカフ、リング(ともにスタイリスト私物)
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