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-特集-
『東京夜市』が発信する《今》、
そしてカルチャーが創る新しい《未来》
ー特集ー
2021年、渋谷カルチャーの明日
『東京夜市』が発信する《今》、
そしてカルチャーが創る新しい《未来》
『東京夜市』プロデューサー 慈友さん
インタビュー
『東京夜市』は、2019年9月にナイトマーケットイベントとしてスタートし、累計来場者数1万5000人を記録した。コロナ禍となる今回はオンラインでの開催に変更し、トークとライブの2本柱でビジネスとエンターテイメントから渋谷を盛り上げていく。
今回、『東京夜市』のプロデューサー:慈友さんにインタビューをおこない、このイベントを始めたきっかけから、オンライン開催となる今回に込めた思い、そして今必要とされるカルチャー論について話を聞いた。
投資家でもある慈友さんが考える、渋谷が持つ可能性とその先に見える未来像とは。
Profile:慈友さん
僧侶社長 /『東京夜市』プロデューサー
日本の大手銀行、外資系証券、戦略コンサルティング会社を経て起業、上場。現在は大企業の経営顧問を歴任するほか、日本、アジアのベンチャー企業に投資、上場支援を行う。経営者・投資家・コンサルタントでありながら、『生きる事こそ修行である』と、日々煩悩と向き合いながら学び続ける浄土真宗の僧侶でもある。
「日本の夜、おもろいやん!」求心力のあるナイトカルチャーを創る
慈友さんが『東京夜市』を始めたのは、今日本で急速に進んでいる人口減少への懸念から。そんな社会のなかで「未来の子どもたちに何を残してあげられるだろう」と考え、参考にしたのがルネサンス期のイタリアだったという。当時のイタリアが人口減少社会でありながらも国力を維持していた背景には、「イタリアが持つカッコ良さ」があったと慈友さんは語る。
「インバウンドでイタリアに行く旅行者が増え、アウトバウンドで世界中の人がイタリアの物を欲しがった。かっこよさと求心力があったからです。日本に置き換えると、日本はものづくりには定評があるけれど、プレゼンテーションやブランディングが得意ではない。そんな中で、どう日本、とりわけ東京に人を惹きつけたらいいのか。その工夫が必要でした。よく外国人が『日本って、パリや台湾みたいに夜遊べる場所が少ないよね』『店がすぐ閉まるよね』と言いますが、ナイトカルチャーがとても弱いんです。ナイトライフエコノミーをどう活性化させるかが、日本の未来に大きな変化をもたらすのではないかと考えました」
祭りや縁日も含めてナイトカルチャーは全国にあるが、それぞれが単発であるがゆえに発信力に欠けてしまう。全体としてパターンやクリエイティブを揃えて、まとめて発信できたら良いのではと思い、『東京夜市』という大きなフレームを創ったのだそう。「『東京夜市』は、自由で何をやってもいいんです」と慈友さん。
「“東京の夜をもっと楽しもう!”がコンセプト。沖縄特集でもいいし、一昨年はラテンクリスマスを開催しました。自由ではあるものの、クリエイティブは揃えられていて、例えるなら“整然としたカオス”。それが定着すると求心力になり、世界中が『日本の夜、おもろいやん!』となる。まずは東京、渋谷から型を創り、次に博多、次は札幌、次はと地方でも開催されるようになり、最終的には『東京夜市』の年間スケジュールができる。毎日、日本のどこかで夜市をやっているのが理想です。昔からある地域の祭りと連動してもいいんですよ」
トップランナーが“今”を描く、トークとライブのオンライン配信
今回の『東京夜市』のテーマは“ここから、新しい未来がはじまる”。様々なジャンルのトップランナーたちがトークや音楽ライブを通して未来を指し示すようなプログラムをオンライン配信していく。
「各界のトップランナーやアーティストは、コロナのビフォア・アフターについてじっくり考えています。そんな思いのもと、それぞれがプログラムを創ることに価値があり、それが一番の見どころでもあります。
“未来トークライブ”では、1日1テーマで2組が対談を行い、ワークライフバランス、ジェンダーなど今日本が抱えている課題について話します。“未来エンターテインメント”では、ミュージシャンやアーティスト、DJがライブをします。
オンラインだからと奇を衒ったことはせず、必要とされることに重点を置きクオリティをしっかり見せることが大事だと考えました。視聴者それぞれが楽しみたいコンテンツを選び、自宅にいながら盛り上がってもらえたらと思います」
コロナ禍になり1年半。誰もがこの状況に疲弊し、日々不安を抱えて過ごしてきた。慈友さんは、そんな状況や空気感がイベント開催を後押ししてくれたと振り返る。
「今、世の中は暗いですよね。医療体制は崩壊しかけ、状況は日々悪化し、次は私が感染症にかかるんじゃないか?と恐怖心もある。飲食業界、エンタメ業界も壊滅的で、みんな不安でしんどいです。だからこそ、家にいるときはそれを忘れられるような時間があったらいい。ちょっとでも気持ちが緩やかになってもらえたら、という思いもあります」
カルチャーは未来を語るためのツール、今を反映する
私たちはカルチャーやエンターテイメントに救われ、元気をもらうことができる。それが人生に必要不可欠であることは言うまでもないが、投資家でもある慈友さんがビジネス的視点から考えるカルチャーのあり方とはどんなものなのだろうか。
「カルチャーは理想とか、“こうあるべき”という理論から入らないほうがいいと思っていて、むしろ勝手に生まれてくるものだと思います。カルチャーは未来を語るためのツールで、
芸術は自分の中の創作意欲を、他人とコミュニケーションするためのものではないでしょうか。そこには今の日本が自然と反映されています。
仕掛ける側としては、クリエイターのクリエイティビティをできるだけ忠実に表現できる場所創りをしたい。クリエイターやエンターテイナーがビジネスマンの思考を理解するのは難しいし、行政や企業が彼らを理解するのも難しさがあると思います。そのために僕らが行政側に交渉したり、企業を巻き込んでプロジェクトを考えたり、彼らの通訳的な役割でありたい。彼らのやりたいことや“今”を発信できる場所を創りたいと考えています」
コロナのビフォア・アフターでエンターテイメントやカルチャーのあり方は変わっていくはず。今こそもっとカルチャーが盛り上がるために、受け手である私たちはどう行動し、どうアプローチしていくべきなのか。「受け手はもちろん、発信者側にもパッションが必要」と慈友さん。
「とりあえず明るく行こう!とか、元気出して!とか、きれいごとを言っても人の心は動かない。みんなが感じる寂寥感、鬱屈とした空気感を表現するのがカルチャーです。過去のアーティストを見ても、その時代の空気感を表現できたものだけが残っている。アーティストはうまく取り繕おうとせず、今の空気感や湧き上がる感情を出して欲しい。だから自由にやってもらうことに価値があるんです。
受け手側は不謹慎だとか言わずに、アーティストに対して“今この瞬間に湧き上がるものを出してくれ!”と声を上げ続けること。そして、アーティストの心の底から湧き上がってきたものを素直に受け入れるための素地を備えておくことが大事だと思います」
新しい渋谷×『東京夜市』 求心力を取り戻すきっかけに
渋谷にはひとしおの思いがあるという慈友さんは、渋谷の街が積み重ねてきた歴史と『東京夜市』プロジェクトの信念がクロスオーバーするところに生まれる新たな時代に期待していると言う。
「僕自身、20年前に初めて起業した場所が渋谷でした。飲みに行ったり、食べに行ったり、遊びに行く場所も渋谷で、仲のいい企業や顧問先も渋谷に多くありました。たくさんの縁もあり、渋谷が好きなんです。起業当初は、ビットバレー(インターネット関連のベンチャー企業が集まっていた渋谷区やその周辺の呼称)の立ち上がりの頃で、渋谷にはクリエイターが集まり、新しいものを創っていく街でした。渋谷PARCOにSHIBUYA109、時代を創ってきたのは渋谷です。
現代になり、今は東急グループが駅前の再開発を進め、大人を巻き込んで新しい渋谷を創ろうとしている。この大きな文脈と『東京夜市』、互いに新しい文化を創ろうとする志向がシンクロするんじゃないかと期待しています。
『東京夜市』が、夜を面白くし、渋谷の求心力を取り戻すきっかけになることを目指しています」
東京夜市 公式HPはこちら( 2021 9.16 – 9.20)
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【鼎談】Naz Chris × Watusi × 近田春夫 × 小泉今日子 の記事はこちらからご覧いただけます。
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