Crew Architect Jo Nagasaka
- 建築家
Jo Nagasaka
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スキーマ建築計画 代表 建築家(後編)
PROFILE:
スキーマ建築計画代表
1998年東京藝術大学卒業後にスタジオを立ち上げ、現在は北参道にオフィスを構える。家具から建築、町づくりまでスケールも様々、ジャンルも幅広く手掛ける。どのサイズにおいても1/1を意識し、素材から探求し設計を行い、国内外で活動の場を広げる。既存の環境の中から新しい価値観を見出し「引き算」「知の更新」「半建築」など独自な考え方で、建築家像を打ち立てる。
INTERVIEW
何故、トップクリエーターになれたのか?
Photography By Yuichiro Nomoto
Text By Ryo Ishii
Direction By PROJECT ONE
Tie-Up with yuhaku
スキーマ建築計画 代表 長坂常氏
プロの仕事術 と 日々の愛用品
(後編
前編はこちら
産みの苦しみを、
楽しいに変える“知の更新”という考え方
スキーマ建築計画 代表 建築家
長坂常氏
「HAPPA」と「Sayama Flat」を通して自分なりのスタイルを見出した長坂さんはその後、オーストラリアの高級スキンケアブランド「Aesop」やオランダのロイド・ホテルとタッグを組んだ期間限定ホテル「LLOVE」、コーヒーブームを牽引する「Blue Bottle Coffee」など、次々と話題性のあるクライアントの案件を手掛けるように。そうした中で、クリエイションの引き出し方もアップデイトされたという。
「HAPPAを手掛けて以来、よく意識するようになったのは“知の更新”です。知ることを更新する。つまり、知らないことを積極的に吸収しようとする姿勢や、やったことのない事を試してみる姿勢が、面白いものを生み出す秘訣だと思っています。新しいコンセプトを無理に生み出そうとする必要はなく、知の更新を続けていくことで自分の感性を磨けるし、仕事もアップデイトしていくことができるのではないでしょうか」。
「知らなかったことを知ることは自分だけの喜びではなく、多くの人と一緒に共有できること」と長坂さんは続ける。例えばクライアントとの打ち合わせでは、対等な立場で意見し合える雰囲気作りを心がけているとか。深いコミュニケーションが取れてこそ、本質的で新しい取り組みが見えてくる。常に第一線で新しいものを生み出していけるのは、常に正面から向き合っているからこそ、というわけだ。
「本当なら、型を作ってそれを繰り返していけば楽なんでしょうけどね(笑)。でも、それはしないと決めているし、そもそも出来ないんですよ。既存の建物を生かして設計する場合には、現場でしか判断できないことがたくさんあります。この壁を生かそうと思っていたら、翌日には崩れていたなんていうハプニングもザラですから。そんな中でも最後までやれることをやりきるのも大切。結局クライアントや施工会社に面倒を掛けてしまうことも多いですが……(苦笑)。毎回ゼロから考えるのはものすごく大変ですけれど、普段から知の更新を意識することで、それも楽しめるようになりました」。
長坂さんの仕事に対する考え方には非常に前向きな印象を感じる。しかし、悩みがないわけではない。近年の働き方改革の影響を大きく受け、時短とクリエイティブの質をどう担保するかということには日夜腐心しているという。
「昔は建築家といえば憧れの職業で、どんな環境でも働きますみたいな時代もありましたが、まさか効率化が求められるようになるとは思いもしませんでした。今は限られた短い時間の中で、それでもちゃんとクオリティを上げていかなければならない時代です。現在スキーマ建築計画は20人くらいの規模ですが、3チームに分けて指揮系統を整理してみたり、自分1人で19人を見るようにしてみたり。結局今は半分チームのような形に落ち着いています。働いてくれているスタッフにも意見を聞きながら、とにかく今は試行錯誤しています」。
そんな変化の中にあって、建築の未来は、長坂さんの目にどう映っているのだろうか。最後に、そのビジョンについて聞いてみた。
「これからは、会社という組織に固執せず、もっと柔軟に人と人が繋がってものづくりをする時代になっていくんじゃないか、と感じています。建築の場合、何かあったときの責任問題がシビアなのがネックではありますが、今はネットを介していろんな環境をシェアできる時代ですから、活用しない手はありません。知らない土地で知らない人と仕事をすることで新しい発想も生まれるでしょうし、知の更新という観点からも、そういった働き方に期待したい。これから、どうしたらそれを実現できるのかを少しずつ考えていきたいと思っています」。
Column
日々を彩るプロフェッショナルの愛用品
プロフェッショナルたちが普段持ち歩いている必需品や仕事道具を見せていただきながら、モノに対するこだわりを紐解く。
「僕はモノを所有する自信がないんです」。いきなりそう教えてくれた長坂さん。なんでも昔、お気に入りの自転車を二回盗難されたことがあり、そんな風に思うようになってしまったのだとか。ただ、自信がないからと言って、もちろん何も持っていないわけではない。むしろ持ち物を選ぶ基準ははっきりとしている。
「モノを買うんじゃなくて、アイデアや機能を買うという風にいつも考えています。モノに対する愛着で選ぶのではなくて、必要だから買う。仕事道具などは言わずもがなですが、例えば自転車は自宅からの通勤や打ち合わせ先や現場までの移動に使っているもの。折り畳み式なのは、仕事帰りにお酒を飲んだ際、タクシーに載せて帰れるサイズで考えました。実際に使ってみるとかなり便利で、先日は京都出張に持っていったりと活用しています」。
また、サドルに掛かっているのはなんと水着。泳ぐのが好きで、川や海など水辺を見かけたら泳ぎたい衝動にかられるのだとか。すぐに泳げるよう、よく持ち歩いているそうだ。KEENのサンダルも水陸両用タイプなのはそれが理由。なんと1年の内、6ヶ月くらいはオンシーズンだという。
さて、こうして愛用品を見てみると、黒が多いことに気が付く。何か理由があるのだろうか。
「本当はもっと色を取り入れたいんです。色の組み合わせには結構うるさくて、家を出てからこの色なにか違うな、と思うと一日中ブルーになるくらい。今は忙しくて色を気にできるほど余裕がないので、必然的に身につけるものは黒ばかりになってしまうんですよね」。
そんなこだわりが強い長坂さんに選んでもらい贈らせていただいたのが、コードヴァンを使用したDiamantシリーズの二つ折り財布。最高品質を誇るタンナー、レーデルオガワのコードヴァンを手染めで仕上げたものだ。
「奥行きのあるグラデーションがとても綺麗だったので選びました。個人的に濃紺は好きな色なので、これは普段から取り入れたいですね」。
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